アリラ・チャアムの設計者、ドゥアングリット・ブナークはアジアを代表する建築家の一人です。タイをベースに活躍する彼は、これまでタイ、クラビのブティック・ホテル「コスタ・ランタ」のリノベーションの他、バンコクの高感度商業コンプレックス
「H1」やタイで初めての本格デザインマガジン「Art4D」の発刊などに関わってきました。彼が最近デザインしたバンコクのインターネット・カフェ「トゥルー・アーバン・パーク」や、デザイン・ショップ「タイ・クリエイティブ・デザイン・センター」は、タイ国のデザイナー力を世界にしらしめ、彼の手がけた作品は国内外を問わず大きな注目を集めています。
さて今年オープン予定のアリラ・チャアムに到着したとき、あなたはそこに何をみるでしょう?入り口から、美しく緻密なまでにデザインされた庭へと登る荘厳なアプローチ。リゾート感あふれるリフレクション・プール。まるで不思議の国に迷い込んでしまったような錯覚を覚える敷地内の通路やテラス。そしてどこまでも遠くどこまでも続く、一大オーシャン・パノラマ。
どのデザインも、古木や石灰岩、大理石をあしらい、大胆な形を描きながらそのラインは繊細で優しい。刺激的かつ官能的な組み合わせが、このリゾートに他にはない現代的な特徴となっています。設計者ドゥアングリット・ブナークにインタビューを試みました。
質問:ビーチと森に囲まれた敷地に、どのようなレイアウトを考えていったのですか?
答え:設計の段階で、直線的なモチーフをデザインに組み入れました。訪れた人は、幾何学的なそのたたずまいにまず驚き、次いで大きな白い大理石のタイルに目を奪われ、ステップを登っていくと、そこに詩的空間の広がるオープン・スペース・タイプのロビーがゲストを出迎える。そのロビーには18mもの長さの木製の格子がはめ込まれ、はるか水平線の向こうに溶けるように流れ落ちるリフレクション・プールがあるのです。プールの端のビーチ・フロントには、レストランを配置し、まっすぐなラインを作りました。
質問:アリラ・チャアムのこうした直線的な清楚なデザインは他のビーチ・リゾートとは一線を画すデザインになっていますね。
答え:はい。今回デザインするにあたり、単なる「モダン」建築ではなく、「リゾート」建築であることを意識しました。デザインにおけるモチーフは、単なる空間、明るさ、動線やスタイルではなく、訪れたゲストが何を感じ、またデザインと呼応してリゾートに来たというやすらぎを感じられることが主眼となるべきです。その土地のカルチャー、またリゾートにおいて休息をし、遊び、食事をする。そうしたゲストの一つ一つの行動や気持ちがデザインに反映されることを念頭においたのです。例えば、各部屋のレイン・シャワー一つをとっても、ドイツのCeramiche社のものを取り寄せています。このシャワーの口は60cm×48センチもの大きなもので、このシャワーに打たれれば、単なるシャワーではなく、まるでタイ特有のスコールを浴びるような気持ちを感じることができるでしょう。
質問:建築と機能面の関係はどのようになっているでしょう?
答え:デザインにおける機能面での特徴は、シンプルであること、そしてわかりやすいこと。レストラン「クラウズ・ロフト」の場合、リフレクション・プールの屋根の上に位置し、そこからプールと、ビーチと海を見渡すことができます。一方スパはプライバシーを配慮し、プールから見えない位置に配置しました。スパは5つの部屋と、ミネラルを含む温度管理されたプールがあり、室内から空が見えるよう窓を配置しました。「レッド・バー」には、赤い色を部分的に使い、パーティ気分を盛り上げます。
質問:アリラ・チャアムの設計で最も苦労した点はどこでしょう?
答え:タイの伝統建築と相反するモダンデザインとの間に、きっちりと意味のある解釈を与えることでした。次の時代になっても陳腐にならないものをデザインすることは難しいことですが、幸い、今回は革新的ライフ・スタイルを提唱するアリラ・ホテルズが、私のビジョンを理解して頂くことができてよかったです。 |