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アグン山からの贈り物〜標高2,300メートルの頂上から
 
2006年11月23日
 

まだ朝の明けない夜のうちに、私達を載せた車は、バリ島東海岸パダン・バイからアグン山へと向かう上り坂を走っていた。居心地のよかった下界から生き物たちが寝静まった森の中に分け入り、それはまるで非現実の世界へと放り出されるかのようだった。夜明けの始まるその不思議な光景に、私達はただただ息をのんだ。

曲がり道を進むと、まるで昼間のように明々と灯りの灯る市場に出くわした。午前1時であるというのに、犬が吠え、トラックが横付けされ、人々が後から後からバイクでやって来る。夜と昼が完全に逆転したかのように、すでに人々が活動しており、このサラックの市場で採れたスネークフルーツは、夜明けにはデンパサールの市場に並ぶのだった。

今回、私達一行が宿泊していたアリラ・マンギスが、アグン山に登る準備をしてくれた。「(登頂は)大変だけど、行くなら夜が明けきらないうちには登ったほうがよい」というスタッフからのアドバイスに、私達を勇気づけられた。

私達は、車を停め、そこをベース・キャンプとして、ペンシル型のトーチ、寺院から授かったたくさんの聖水を持って出発した。私達を案内してくれたガイドは、バリ人にとってアグン山がどれほど重要な意味を持つかについて語ってくれた。バリの多くの人々が、自分の願いを叶えるためにアグン山に登る、ということだった。

上り始めると、岩山が張り出す山道で、私達は月明かりをたよりに進んだ。枝や木の根につまずかないよう、トーチを照らしながら、ガイドが踏んだ跡を踏み外さないように、私達はガイドの後ろを進んだ。

次第に空気が薄くなり、立ち止まるたびに深呼吸をする。のどが渇いたので、私達は水をたくさん飲んだ。地面からは鉱山ガスが立ち上るのを、足でもみ踏み消していく。

40分ほどすると、突然山の両端を見渡せる踊り場に出た。ごつごつとした低木と石が月に照らされ、足下に転がっている。静寂を破る風のうなり声の鳴る荒々しい光景で、私達はのんびりする暇はなく、ここに私達より先に登ってきた人達がいるのだということを考えるのがやっとだった。進むにつれて、周囲の雰囲気や静寂が明らかに変化していくのがわかる。静寂はどんどん進んでいく。

標高2,000メートルのあたりで、私の娘が、耳に圧迫を感じるようになった。気温も低くなってきた。私は、同行者に、いったんここで留まるように提案した。大きな山の際で、私の娘は軽い寝息と共にうたた寝を始めた。

今ここにいるのは私達だけ。時間感覚は消え、始まりも終わりもない無限の空間が広がり始めているのだった。闇はまだ続き、ひんやりとしたスピリチュアルな空気を感じながら、私は肉体的にも、精神的にも、全ての先入観がはぎとられるような感覚を覚えた。もうすぐ始まるであろう夜明けの闇の中にあって、自分という存在がどんどん小さくなるのを感じた。

束の間の間、じっと考え込んでいたが、光りが徐々に世界を照らし、鳥たちがさえずり始めると、私はもっと大きな意識へと向かっていった。岩肌に座り、夜明けの始まりと共に広がる眼下の雲を見ながら、地球というものの素晴らしさに、感じずにはいられないのであった。

雲の隙間から、幾本かの光が差し込む。それはまるで「そんなに大騒ぎすることじゃないさ。知らないだろうが、ここでは毎日行われていることなのさ。もっとリラックスしてこの光景を楽しみ給え!」と私をからかうのだった。私と娘はうれしくなって、岩肌の上で踊り始めた。まるで雲の上でステップを踏んでいるかのよう。

私達より上のほうにいた仲間が降りてきて、これから始まる長い登山に備えて食事を始めた。ベルギーからやって来ていたファミリーや、私達を追い抜いて先に頂上に行った日本人カップルも戻ってきて私達の輪に加わった。

食事が終わって、お茶を飲みながら楽しく歓談をして、結局私達は降りることにした。下りは、とても不思議な気持ちだった。目指す降り口が見えているのに、降りたくないという気持ちがあり、しかし実際には下らざるを得ず・・・。自分が今いる場所がどこかもわからず、かといってそれが特に何かを意味するものでもなし・・・。

もし人に聞かれたら、私は、アグン山への登山を強く勧めるはしない。したいと思ったら、すればよい。あの夜、全ての人が、自分だけの貴重な体験をした。私は行って良かったと思っている。アグン山からの素敵な贈り物を体験したい人は、参加してみてはどうだろう。そのとき、時間が許すのなら、チャンディダサにあるアリラ・マンギスへの宿泊をおすすめする。登山の後、疲れた体を癒すことができるだろう。

By Katy Robertson
Bali & Beyond Magazine, PT Bumi Dian Kusuma
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